育児・教育

学資保険は毎月いくら支払う?無理のない計画の立て方

学資保険に加入すると、基本的に契約で定めた時期まで保険料を払い続けなければなりません。教育資金を準備する方法として学資保険への加入はおすすめしたいことのひとつですが、保険料が家計の大きな負担となるのは避けたいものです。本記事では、学資保険の保険料の決まり方を説明するとともに、学資保険に加入するときの保険料の考え方について解説します。できるだけ家計への負担を抑えられる加入方法についても説明しますので参考にしてください。

 

■学資保険の仕組み

学資保険は子どもを被保険者とし、原則、親が契約者となり加入する貯蓄タイプの保険です。貯蓄タイプとはいえ保険であるため、一般的な銀行預金のように積み立てた額に対して決まった金利で利息が付いて貯蓄が増えていくのではありません。例えば「18歳になったとき」、「18歳以降22歳まで毎年」「22歳になったとき」など、子どもが一定年齢に達した際に「学資金(祝い金)」や「満期保険金」が保険会社から支払われます。教育資金が必要となるタイミングに合わせて学資金を受け取れるため、計画的に教育資金を準備できます。

 

また、万一、保険料の払込期間中に契約者が死亡または高度障害状態になった場合、以後の保険料の払込みは免除となりますが、学資保険の契約はそのまま継続できます。契約時に決めたとおりに学資金や満期保険金が受け取れますので、預貯金等で教育資金を準備する場合に比べて資金計画が崩れるリスクは小さいです。

 

このような仕組みから学資保険の保険料には「貯蓄」に回る部分に加え「保障」に関する部分が含まれています。学資保険はあくまで教育資金の準備が目的ですから、受取り額が払込保険料を下回るのは避けたいものです。

 

これを確認する基準が「返戻率」です。返戻率とは、簡単にいうと「払込保険料総額に対していくら学資金や満期保険金を受け取れるかの割合」で、次の計算式に数字を当てはめて算出できます。

 

返戻率=「学資金や満期保険金の総額」÷「払込保険料の総額」×100

 

例えば、払込保険料総額が100万円である場合、受取総額が110万円であれば返戻率は110%(110万円÷100万円×100)となり、受取総額が95万円であれば、返戻率は95%です。

 

このように、返戻率が100%を超えれば保険料総額より受取総額のほうが多いことになります。つまり、受取総額が同じ場合では、払込保険料を抑えることができれば、返戻率は上がることになります。

 

■教育費はいくらぐらい必要か?

学資保険に加入する際には、教育資金はいくらぐらい必要か、ある程度の目安を掴んでおくことも大切です。実際には進路によって異なりますが、ここでは国公立と私立の場合に分けて紹介します。

 

国公立の場合

幼稚園から大学まで、すべて国公立で進んだ場合の子ども1人当たりにかかる教育費の目安額は約817万円です。

 

それぞれのステージでかかる教育費用の目安は以下の表のとおりです。

 

幼稚園(3年間) 47万2,746円
小学校(6年間) 211万2,022円
中学校(3年間) 161万6,317円
高校(3年間) 154万3,116円
大学(4年間) 242万5,200円

(入学料28万2,000円を含む)

合計 816万9,401円

出典:幼稚園から高校までは文部科学省「子供の学習費調査(2021年度)」、大学は文部科学省「国立大学と私立大学の授業料等の推移」をもとに筆者作表

 

なお、幼稚園から高校までの学習費には、「学校教育費」「学校給食費(※)」「学校外活動費」が含まれています。

(※)学校教育費は幼稚園から中学校まで

 

学校教育費とは、授業料、入学金、学校納付金、通学費等、学校教育のために各家庭が支出した全経費です。

 

学校外活動費とは、塾や家庭教師、参考書代等、学校教育に関係する学習をするために支出した経費や、スポーツ、音楽、体験活動等、知識や技能、感性、教養などを養うための活動のために支出した経費です。

 

私立の場合

幼稚園から大学まで、すべて私立で進んだ場合の子ども1人当たりにかかる教育費の目安額は約2,307万円です。

 

それぞれのステージでかかる教育費用の目安は以下の表のとおりです。

 

幼稚園(3年間) 92万4,636円
小学校(6年間) 999万9,660円
中学校(3年間) 430万3,805円
高校(3年間) 315万6,401円
大学(4年間) 469万467円

(入学料24万5,951円を含む)

合計 2,307万4,969円

出典:幼稚園から高校までは文部科学省「子供の学習費調査(2021年度)」、大学は「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」をもとに筆者作表

 

幼稚園から高校までの学習費の内訳は国公立の場合と同様ですが、大学は授業料のほか施設設備費も含まれます。また学部や学科によっても費用差があるため、あくまで目安として捉えておきましょう。

 

さらに習い事なども

上で紹介した学習費のなかには学校外活動費として塾や習い事にかかる費用も含まれていますが、あくまで平均額です。習い事の種類によっては、月謝以外に付随の費用が多くかかる場合もあることを考慮しておきましょう。例えば、スポーツ系ならユニフォームや道具代、遠征費や合宿費など平均を上回る費用がかかることもあるでしょう。

 

また、成長するに従い、留学の希望を抱くようになる子どももいるかもしれません。そうなるとさらに費用が掛かります。

 

■学資保険の保険料の考え方

進路により差はあるものの、幼稚園から大学卒業までに多額の教育費が必要であることがわかりました。そこで、教育費を学資保険で準備する場合、満期保険金をいくらに設定すべきか悩む方もいるでしょう。しかも、受取り額を多くするほど保険料が上がり、家計へのインパクトも大きくなりがちです。確実に教育資金を準備するためには、家計に無理のない範囲の保険料を設定し、中途解約は避けなければなりません。中途解約した場合の解約返戻金は払込保険料よりも少なく返戻率は100%を下回ります。

 

そして、同じ満期保険金であれば、保険料を抑えられるような加入の仕方を考えてみましょう。

 

いつどれくらいのお金が必要なのか

まずは、いつ・いくらのお金が必要で、そのうち学資保険で準備するのはどの資金かを検討してみましょう。例えば、次のような受け取りパターンが考えられます。

 

1.高校入学時と大学入学時にかかるお金

2.大学入学時にかかるお金

3.大学入学時と在学中のお金

 

 

 

いつまでに保険料の支払いを終えるのか

「保険料払込期間」も保険料額に影響します。学資保険ではいつまでに保険料の支払いを終えるかパターンを選べるのが一般的です。例えば、複数の満期まで保険料を払い続けるパターンや、子どもが10歳になるまでなど満期前に払込みを完了させるパターンです。

 

子どもが成長するに従い、想定外の支出が増える可能性もありますので、子どもが小さいうちに保険料の払込を終わらせておくのもいいでしょう。保険料の払込が早く完了すれば返戻率は上がります。ただし、契約者が死亡した場合や、高度障害者となった場合の保険料払込免除の恩恵は受けられないことに留意する必要があります。また、払込期間が短いほど1回当たりの保険料は長い場合に比べて高くなります。家計負担と返戻率のバランスを総合的に検討しながら選択しましょう。

 

■学資保険は毎月いくら支払う?

 

実際に、毎月の保険料をいくらにすればいいか気になるところですが、まずは学資保険の満期保険金をいくらにするかを決めるところから始めましょう。ここでは国公立大学へ進学する費用として240万円を18年間で準備する場合で見ていきましょう。

 

預貯金で準備するとした場合、月々11,100円程度(240万円÷18年÷12ヵ月)積み立てることになります。

 

一方、240万円を学資保険で準備する場合の保険料は月々いくらになるでしょうか。次のパターンで検証してみます。

 

設定例1:大学入学時と大学在学中に受け取るパターン

大学進学費用として必要な240万円を、大学入学時(18歳)と在学中に分けて受け取るパターンでシミュレーションしてみましょう。

 

【シミュレーション条件】

被保険者0歳、契約者30歳・男性

保険料払込期間:18歳まで

大学入学時(18歳)の受取り額:80万円

在学中(19歳、20歳、21歳)の受取り額:各40万円x3回

満期時(22歳)の受取り額:40万円

受取総額:240万円

保険会社によって保険料に多少の差はありますが、ある保険会社では月額保険料が10,920円です。この場合の保険料払込総額は235万8,720円、返戻率は101.7%です。

 

設定例2:保険料払込みを短期で終了させるパターン

次に、上記と受取り条件は同じで、保険料の払込みを早期に終わらせてしまうパターンでシミュレーションしてみましょう。

 

【シミュレーション条件】

被保険者0歳、契約者30歳・男性

保険料払込期間:10歳まで

大学入学時(18歳)の受取り額:80万円

在学中(19歳、20歳、21歳)の受取り額:各40万円x3回

満期時(22歳)の受取り額:40万円

受取総額:240万円

18歳までの払込みを10歳までに短縮することで月額保険料は18,896円となりました。1回あたりの金額は例1のパターンより8,000円程度高いですが、保険料払込総額は226万7,520円と91,200円少なくなります。この場合の返戻率は105.8%です。

 

なお、保険料を下げて返戻率を上げる方法としては、保険料の払込を年払いにする方法もあります。

 

 

■いつから準備すべきか?

学資保険への加入を検討する場合、できるだけ早いうちに加入するのがおすすめです。同じ条件の契約の場合、早く加入するほど保険料を抑えることができます。

 

加入する年齢にかかわらず進学のタイミング(年齢)、つまり学資金が必要となる時期は決まっていますから、加入が遅くなるほど、短い期間で学資金の準備をしなくてはならなくなるからです。

 

上で見た例1の設定パターンで契約年齢を変えて保険料をシミュレーションしてみましょう。

 

 

 

被保険者年齢 契約者年齢 月額保険料 保険料総額 返戻率
0歳 30歳 10,920円 235万8,720円 101.7%
1歳 31歳 11,592円 236万4,768円 101.4%
2歳 32歳 12,360円 237万3,120円 101.1%

 

加入年齢が上がるにつれて保険料払込期間が短くなって保険料額が上がるのは、設定例2)で見た短期で保険料払込みを終わらせてしまう場合と同様です。しかし、先のパターンとは違い、保険料額が上がっても返戻率は逆に下がっています。

 

つまり、少しでも早く学資保険に加入し、教育資金準備を始めることは、「保険料負担が軽くなる」「返戻率が上がる」といったメリットにつながるのです。

 

また、保険会社にもよりますが、年齢が上がると希望する学資保険の設定ができないケースもあります。ご自身の必要性に応じた設定内容で加入するためにも早めの加入がおすすめなのです。

 

■学資保険以外にも教育費を準備するための方法

ここまでの説明で、早期の加入を逃してしまい、保険料の高さや返戻率の悪さを感じるようになった人もいるかもしれません。また、早めに準備するとしても学資保険の返戻率にあまり魅力を感じない人もいるかもしれません。

 

これに対するひとつの対策法として資産運用でお金を増やす方法があります。しかし教育資金は子どもの将来のために必要なお金です。確実に学資金を準備するためには、前述したように「保障」があることも望まれます。そこで、資産運用と保障を兼ね備えたものとして変額保険の活用も検討してみましょう。

 

変額保険は、保険会社の運用成果次第で保険金や解約返戻金の額が変動するというもので、資産運用を兼ね備えた保険です。契約者が支払った保険料を保険会社が株式や債券、投資信託などを対象とする特別勘定で運用し、運用実績が保険金や解約返戻金に反映します。運用実績が良ければ受け取る額が多くなり、逆に運用実績が悪ければ受取り額も少なくなります。

 

とはいえ、契約時には「基本保険金額」を定めていますので死亡時点の運用成果が基本保険金額を下回っている場合でも、死亡時には基本保険金額が保証される仕組みです。

 

・死亡時:基本保険金額+変動保険金(運用実績が好調な場合)

・満期時:積立金の運用実績での満期保険金

・解約時:解約時点の運用実績に応じた解約返戻金

 

ちなみに変額保険には満期がある有期型と満期のない終身型があります。どちらの場合も、運用実績が好調な際に解約して教育資金を確保してしまうのもいいかもしれません。ただし、契約してから数年で解約をする場合には元本割れする可能性もありますので注意が必要です。また、特別勘定を管理するための費用や特別勘定のなかでの運用にかかる費用など、一般的な保険とは別の費用が運用資産から控除されることにも注意しましょう。

 

変額保険を検討する場合は、株式や投資信託などと同じように運用には価格変動リスクを正しく理解した上で利用することが重要です。変額保険販売資格を持った専門家に相談されることもおすすめです。

 

■まとめ

学資保険は計画的な教育資金準備に向いている保険です。しかし、保険料が高くて継続できなくなれば予定通りに準備ができません。家計への負担をできるだけ抑えるためには、できるだけ早めに加入するのがおすすめです。もしも加入が遅れて保険料が高い、返戻率が悪くなるような場合には、変額保険を活用するなど他の方法も検討されるのもおすすめです。

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