学資保険の満期時期はいつ?満期年齢の考え方
子どもが生まれると、多くの人が加入を検討するのが学資保険です。加入にあたって注意したい点の一つに、学資を受け取る満期時期の設定があります。何も考えずに満期を18歳にすると、大学の入学金に使えない可能性もあるので注意してください。この記事では、学資保険の満期の種類、学資保険に代わる教育資金準備の方法などについて解説します。教育資金準備に関心のある、子育て世代の人の参考になれば幸いです。
学資保険とは
学資保険は子どもの教育費の準備を目的とした、貯蓄型の保険です。親や祖父母などが保険料を支払い、子どもの入学に合わせて満期保険金などを受け取ります。さらに、契約者である親などが死亡した場合、以後の保険料が免除される点が大きな特徴です。保護者が死亡すると家族の収入が途絶え、子どもは希望どおりの進学ができない可能性があります。学資保険に加入していれば、親の死亡時にも子どもが進学を諦めずにすみます。
払込期間によって変わる返戻率
学資保険の保険料の払い込み期間は満期と同じタイプと、10年などの短期のタイプがあります。短期で払込を終わらせるほうが、保険料に対する満期保険金の返戻率が高くなります。ただし、短期払いのタイプは1回あたりの保険料が高いことに注意が必要です。
大学の学費はいくらくらい?
一般的に、学資保険は子どもの大学入学などに合わせて加入します。学資準備の目標金額を決めるには、大まかな大学の学費を知っておいたほうがよいでしょう。以下、2019年(令和元年)の大学の入学金と授業料のデータを紹介します(公立大学と私立大学は平均額)。
入学金 | 授業料 | |
---|---|---|
国立大学 | 28万2,000円 | 53万5,800円 |
公立大学 | 39万2,391円 | 53万8,734円 |
私立大学 | 24万8,813円 | 91万1,716円 |
出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」より
私立大学に4年間通う場合、389万5,677円(24万8,813円+(91万1,716円×4年間))かかることになります。あくまで参考値ですが、学校教育費だけで数百万円単位のお金がかかることがわかります。大学進学を想定しているなら、子どもが生まれたらなるべく早く準備を始めるようにしましょう。
学資保険の満期について
学資保険の満期は、大きく分けて18歳のタイプと22歳のタイプがあります。それぞれの特徴を解説します。
18歳(17歳)満期
18歳(17歳)満期型は被保険者である子どもが18歳になったときに、満期保険金を一括で受け取るタイプです。大学入学時は学費以外にもさまざまな支出が必要になります。18歳満期型は、入学時の大きな費用負担に特化して備えられる点が特徴です。一括受け取りのため、支払った保険料との差額(利益部分)は一時所得に該当し、所得税が課税される場合があります。
17歳満期を選択したほうがいいケースとは?
18歳満期型では、子どもの18歳の誕生日が満期です。早生まれの場合などでは、入学金などの支払いに満期保険金の受け取りが間に合わない可能性があります。また、一般入試以外の推薦入学などでは10月か11月くらいに入学が決まり、手続きが必要なケースも想定しておくべきです。そういったケースでも満期保険金を活用したければ、17歳満期を選択するほうがよいでしょう。17歳のうちに満期保険金を受け取っておけば、受験費用に充てることも可能です。ただし、17歳満期は18歳満期に比べて、受け取れる金額が少なくなることに注意しましょう。
22歳(21歳)満期
22歳満期型は、18歳から22歳の間に祝い金などの名目で分割してお金を受け取ります。18歳満期型が大学入学時の大きな支出に備えるのに対し、22歳満期型は大学4年間の学費に備えるタイプです。22歳満期型の祝い金等は雑所得に該当し、受け取った金額に対する保険料相当額との差額に対し、所得税がかかります。22歳時の祝い金は授業料の納付後に受け取ることになるため、大学院への進学資金などが主な使い道です。大学の授業料に充てたい場合、21歳満期を選ぶほうがよいでしょう。22歳満期型は、大学に入学してからの教育費の負担が軽減される点がメリットです。
祝い金について
学資保険の中には、幼稚園・小学校・中学校・高校・大学への入園・入学の節目ごとに祝い金が受け取れるタイプがあります。たとえば、以下のような受け取りパターンが考えられます。
- 幼稚園入園時:祝い金10万円
- 小学校入学時:祝い金10万円
- 中学校入学時:祝い金10万円
- 高校入学時:祝い金10万円
- 大学入学時:満期保険金200万円(総受取額:240万円)
受け取った祝い金は教育費に充当してもよいですが、残った分を取っておくこともできます。
知ってほしい学資保険の返戻金について
学資保険は長い間、教育資金の準備手段として多くの人に利用されてきました。しかし最近では、必ずしも学資保険を教育資金準備のファーストチョイスと考えない人も増えています。ここでは、最近の学資保険のウィークポイントについて解説します。
学資保険は超低金利では貯蓄性が低下
学資保険の問題点は、貯蓄性の低さです。学資保険は教育資金を貯めるための保険なので、支払った保険料に対して受け取れるお金が多いほど有利です。しかし、最近の超低金利の影響で、貯蓄性が下がっています。学資保険の貯蓄性の基準となるのが、満期保険金の返戻率です。返戻率とは支払った保険料に対する満期保険金の割合で、100%を下回ると「元本割れ」の状態です。医療保障の特約が付くタイプなどでは、元本割れを起こす商品もあります。一般的な学資保険では銀行預金よりは増えますが、満期前に解約するとほとんどの場合、元本割れします。
学資保険はインフレに影響される
教育資金は長期にわたって準備するので、インフレを想定しておく必要があります。しかし、契約時に受取金額が決まる学資保険は、インフレに弱い金融商品です。以下は、2001年と2019年の国立大学と私立大学の授業料の比較です。
国立大学授業料 | 私立大学授業料平均額 | |
---|---|---|
2001年(平成13年) | 49万6,800円 | 79万9,993円 |
2019年(令和元年) | 53万5,800円 | 91万1,716円 |
出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」より
2001年に生まれた子どもが18歳になるのが2019年です。私立大学の授業料は10万円以上、上昇しています。現在の100万円の価値は、18年後にはもっと下がっている可能性が高いでしょう。学資保険が教育費の上昇についていけないと、実際に教育費がかかる時期に資金が不足するおそれがあるというわけです。
教育資金準備の手段は学資保険だけではない
ほとんどお金が増えることを期待できない学資保険では、毎月の負担を大きくしないと希望する金額の準備ができません。もし、もっとお金が増える方法で準備ができれば、より少ない負担で教育費が積み立てられます。そこで、最近では学資保険以外の方法で教育費を準備する人が増えているのです。
学資保険以外で教育費を貯める方法
教育資金の貯蓄は住宅購入などの他のライフイベントと並行して行うため、効率的な方法が望ましいといえます。ここでは、学資保険に代わる教育資金の準備方法を紹介します。
外貨建て保険
外貨建て保険とは、保険料を米ドルなどの外貨で運用する保険です。外貨の多くは日本円より高金利のため、外貨建て保険は保険料が安く、解約返戻金などの返戻率が高い傾向があります。また、保険商品なので、被保険者の死亡時には死亡保険金が受け取れます。これらの特徴により、学資保険の代わりに外貨建て保険を教育資金積立に活用できます。
為替変動リスクに注意
外貨建て保険は保険料の支払い時と受け取り時に、為替変動の影響を受けることに注意が必要です。学資の受け取り時に円高になると、為替差損を被る可能性があります。お金の受け取りが近づいたら、為替変動を注視して、円安のタイミングでの受け取りを狙いましょう。
変額保険
変額保険は契約者が支払う保険料を投資信託(特別勘定)で運用し、運用成績に応じて保険金や解約返戻金が増減する投資型の保険です。運用の成果次第で支払った保険料より大きな満期金や返戻金の受け取りが期待できます。また、外貨建て保険同様に、被保険者の死亡時には死亡保険金が受け取れます。変額保険の死亡保険は運用に失敗しても最低保証があり、親などの死亡時にも教育資金の確保が可能です。
変額保険のリスクとメリット
変額保険の保険料は契約者が選んだ投資信託で運用され、運用の成果はすべて契約者が負う仕組みです。運用が上手くいけば受け取れる金額に上限はありませんが、失敗して元本割れすることもあることを認識しておきましょう。変額保険のように毎月同じ保険料で値段の変化する投資信託を買い付ける方法は、投資信託の購入金額を均す効果があります。投資信託が値下がりしても、同じ保険料で多くの数量が買えるため、長期での資産形成が期待できるのです。
つみたてNISA
つみたてNISAは少額投資非課税制度の一種で、積立で購入した投資信託の運用益が非課税になります。1人あたり1年間に40万円までの非課税限度額があり、最長20年にわたり積立ができます。必要に応じて資産の引き出しができるので、教育資金目的の利用も可能です。元本保証ではありませんが、リスクを軽減する仕組みが備わっており、初心者でも取り組みやすい制度です。保険商品ではないので、親の死亡時の保障は別途、掛け捨ての定期保険などで準備したほうがよいでしょう。
FPに相談することが解決の近道に
子どものいる人にとって、教育資金の準備は重要なライフイベントの1つです。子どもが好きな道に進めるように、できるだけのサポートをしたいと考える人も多いでしょう。教育資金を貯めるのに大切なのは、金融商品だけではありません。家族の長期間のライフプランとのバランスも大切です。トータルでライフプランを見直すには、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談することをおすすめします。自分たちだけで考えると結論が出なかったり、間違った選択をしたりする可能性もあるからです。
まとめ
学資保険は、毎月保険料を支払えば教育資金が確実に貯まる方法です。しかし、最近の超低金利で、貯蓄の効率が低下してきました。外貨建て保険や変額年金であれば、親の死亡時に保険金が受け取れて、学資保険より多くの教育費を貯められる可能性があります。それぞれのリスクをよく理解し、各家庭に最適な方法で教育費を準備しましょう。
この記事を書いた人
松田聡子
ファイナンシャルプランナー
群馬FP事務所代表
明治大学卒業後、ITエンジニアとして証券会社のシステムの設計開発に従事。顧客の業務を勉強するなかで資産運用に興味を持ち、投資を始める。その後、国内生保での法人コンサル営業に転身。本格的にFP資格取得を目指す。2007年より独立系FPとして開業。当初は主に企業型確定拠出年金講師やFP資格受験講座の講師として活動。現在はマネーサイトへの執筆と個人や法人へのコンサルティングが活動の中心。FPとしての得意分野は保険・資産運用・年金・相続など。70年代の洋楽ロックとヨーロッパサッカーの愛好家。
保有資格:日本FP会認定CFP・DCアドバイザー・証券外務員二種